「雰囲気でわかってよ」




CE71.血のバレンタインの悲劇を機に本格的武力衝突へと発展した
ナチュラルとコーディネイターの種族衝突は1年という長きに及んでいた。


だが、第二次ヤキン・ドゥーエ戦の攻防の折、両者のトップ両名が死んだこと、
またクライン派と呼ばれる者たちの活動により、長きに渡る武力衝突は終わりを迎えた。



しかし、まだ世界は平和になったとは言いがたい。



ここ、クライン派の艦エターナル、クサナギ、アークエンジェルも終戦の折からこっち、あわただしく動いていた。




「ふう・・・・。」


そういってため息をつきながら、廊下を金色の髪を揺らして歩いてくる人影。


中立国、オーブの首長の娘、カガリ・ユラ・アスハだった。


歩いてくる顔には疲弊の色が浮かんでいる。


(はあ、まだまだ大変だな・・・・)


今は、そうため息をつきたくなるような状況である。


ナチュラルとコーディネイター、遺伝子操作をしたものとそうでないもの。


その違いから、勃発した今回の戦争。


一応の解決を見ることができはしたが、まだやるべきことはたくさんある。


いまだにあちこちに、戦争の根は残っているのだ。

現に、オーブだって壊滅状態。

首長だった父が死んだ今、正当な後継者は自分なのだから、頑張らないといけない。

そう自分に言い聞かせ気合を入れなおしていると、廊下の端に人影を見つけた。


「キラ!」


その人影は呼ばれると鳶色の髪をなびかせながらこっちに振り返る。


「カガリ。」

その人物は、やんわりと微笑みながら返事を返してくる。

その姿は間違いなく自分の弟なのだが。

どうも、最近わかった事情なので実感がわかない。


まわりもその事実を聞いたすぐのときは驚愕していた。

まあ、それは無理もないことなのだ。


実際、はじめに会ったときは、自分ですら弟だと思っていたかった。

というか、自分に兄弟がいることすら知らなかったのだ。


いまも、相手のことを兄弟と思えるか?と聞かれると少し考えてしまう。

しかし親近感は湧いているので、近しい存在であることは確かだ。

近すぎて、遠すぎない。そんな具合の距離になっていると思う。


本当は、かわいくてしょうがないので、姉馬鹿になったなと自分で思ってしまうのだが。


「大変そうだね。」


などといたわりの言葉をかけてくるあたりとても優しい彼らしい。

その彼の言葉に少し苦笑する。

「まあな。地球軍とプラントはこれから停戦条約に向けて会合があるらしいし・・・。」

ため息をつきながらそう返事を返す。

しかし、この忙しさは平和の証であるのだから、喜んでもいいのだが。

やはり、忙しいのは疲れるものだ。

「まだまだ、忙しいね。」

そういえば、この弟は常日頃は何をしているのだろうか。

最近姿を見かけるたびにボーとしている気がするのだが。

頭に浮かんだ疑問を口に出そうとしてやめる。

あまり今は、その答えは聞きたくない。


「それはそうと。」 


無理やりに話題を転換させようとして質問を口にする。


「これから、お前どうするんだ?」


戦争は終わった。

しかし自分達はこれからどうなるのだろう。

それぞれみんな自分のいるべき場所から抜け出してきたものばかりだから
みんなわからないのだろうが、この弟はそれが、とても顕著な例だと思う。

もともと、彼はオーブに住んでいて、カレッジの学生だったのだからその生活に戻るという手もあるのだが。


(まあ、無理だろうな・・・。)


彼の同じカレッジの学生で、特に仲がよかった人達はみんな戦争にかかわった。


中には死んだ者もいたのだ。そうでない人も、戦争で心に大きな傷を負った。

とてもじゃないが、前のように仲良く一緒にカレッジに通うということはできはしないだろう。


それに、オーブという国は、実質今は滅んだ状態だ。


これから復興するとはいえ、すぐに以前のようにというわけには行くまい。


だから、これからどうするか聞いておきたかったのだ。



「さあ・・・。全然、考えていなかったから。」


そのキラの言葉にカガリは少し眉根を寄せた後、何かを思いついたように顔を上げる。

「じゃあさ、私の影武者になってみないか!?」

「・・・・へ?」
















―――雰囲気でわかってよ














「・・・カガリさん。」


そう、名前を呼ばれて振り返る金色の髪の少女。


「なんだ、どうしたんだ?」


その姿は常と変わらず、とても凛々しいものだった。


「この件で少し問題が出たのだけれども・・。」

そうって呼び止めた人物は、彼女よりも年上のように見える。

なのに、その人物が敬語を使うのはその人の人柄のせいだろう。


マリュー・ラミアス。地球連合の元少佐で、AAの艦長でもある。


軍人とは思えない温厚な人柄を持ち合わせた彼女は、キラが乗艦していた当初も何かと気にかけてくれていた。


「・・・その件は、こうしといてくれないか。後で、キサカにも確認をとってくれ。」


「わかりました。忙しいところ、呼び止めてごめんなさいね。」

そういって、マリューは廊下を歩いていく。

その姿が廊下の角を曲がるのを見やった後、息を吐く。


「うわー。緊張するなー。」


第三者がこの場にいたら何を緊張するのだろうか?と疑問に思うだろう。

マリューといることにカガリが緊張するなど、あまり考えられないことだからだ。

     
ならば、なぜ?と思うだろう。

     
その人物は、そう息を吐いた後、自分の髪の毛を引っ張る。

そうすると、その髪は塊となって頭からずり落ちる。

      
そこから現れた髪は柔らかそうな鳶色だった。
     
そう、この人物はカガリではなく双子の弟のキラだったのだ。


「カガリも無茶なこと言うなぁ・・・・。」


2日前にいきなり影武者になれといわれて、口癖から仕草まで真似ろといわれて。

昨日はその特訓にずっとかかりきりだったわけなのだが。

今日になって実践だと言われていきなりズラをかぶらされて、部屋を追い出され。


そうして、今に至るわけなのだが。



(みんな、案外わからないものなんだ・・・・・)


今日はもう4・5人に会ったのだが、誰も気がついたものはいなかった。


そんなに似ているのだろうか、自分とカガリは。


(それもなんか微妙だ・・・・。)


ちょっと小さいとはいえ、自分だって16の男なのだ。

女の子と似ているなんて言われても、あまり嬉しくは無い。


そう思考にふけっていると、後ろから声をかけられる。



「カガリ。」

その名で呼ばれるのももうなれてしまった。

もちろん自分の名前にも反応をしてしまうので、少し不便にも思うのだが。


「アスラン。」


そこにいるのは、藍色の髪を持った自分の幼馴染。

そして現自分の姉の恋人。

小さい頃から一緒に育ったというのに、たった三年間離れていただけで、ずいぶん彼の体格は変わったように思う。

無駄のないしなやかな筋肉がついたその体は何処からどう見ても立派な“男”だった。


(昔は同じくらいだったのになぁ・・・・)


そりゃあ、離れていた三年間の間に彼は軍人としての訓練を受けていたのだから、
民間人だった自分と比べることのほうがおかしいのだろうが。


如何せん、どうにも悔しい。


「キサカさんが呼んでいたぞ。」


そういって翡翠の瞳をほそめて、穏やかに笑う姿は昔と変わらず。

少し、安堵してしまう。

ああ、こういう表情を彼はするんだったのだと。

最近は思うようになったのは、戦時中は切羽詰った顔しか見れなかったせいだと思う。

記憶の中の彼はいつも笑っていたというのに。


「・・・キサカが?わかった、すぐに行く。」


彼女の口調もすっかり真似ができるようになった。

最初はこんな風に喋ることにとても違和感があったのだが、それも回を増すことに自然なものに変わっていった。

そういって、廊下を蹴って移動しようとすると不意に腕を引かれた。


「・・・・アスラン?」

不思議に思って、顔を上げると彼の困ったような顔がそこにあった。


「あ、いや・・・。なんでもない。」

何かをごまかすように、あせりながら言うその姿に疑問を隠せない。


「・・・・・?」

何を、あせっているというのだろうか。

何か用があるのなら早く言えばいいのに。


こんな風に言いよどむのは、いつもの彼らしくない。


しかし、こんな姿を見ると・・・・。


(・・・からかってみたくなるよね。)


遊び心が湧いたキラは、少し笑った後、優しい声音で言う。



「・・・・お前、大丈夫か?なんかあったら言えよ?」


そういいながら、相手に抱きつく。


(懐かしいなぁ・・・・・)


自分も戦時中、彼女にこうやってもらったのだ。

自分が、あまりにも情けない顔をしているから、と。


そうやってもらった後、自分が赤い顔をしていると、それに気付いたカガリの顔も紅く染まってしまったのだが。



しかし、普通だったら、好きな人にこんなことされたら嬉しいはずだ。

でも、それよりも。


(アスランを出し抜くなんて滅多にできることじゃないしね。)


はっきり言って、楽しい。

いつも兄貴ずらしてきたアスランの顔が真っ赤に染まるのをみてみたい。



「・・・・じゃあ、私そろそろ行くから。」


そういって体を離して顔を見ようとしたとき、いきなり強い力で腕を引かれた。


「うわっ!!」


とっさのことだったので、体制が崩れてしまう。


上手く立てなくなって、彼の腕の中に倒れこんでしまった。


不思議に思って顔を上げると、不意に唇に暖かいものが降りてきた。


(え・・・・?これって・・・!!)


そういって目をぱちくりさせてると、前にあるのは見慣れた顔で。


どうみても、アスラン・ザラ、その人のだった。



「うわ―――――!!!!!」



驚き叫んで相手を突き飛ばした後廊下を走り去る。


しばらく、走った後呼吸を落ち着かせようと、深呼吸を繰り返す。


しかしどうにも脈拍は落ち着くことはなかった。




(信じっらん、ない・・・・!!)




彼と、キスをしてしまった・・・・。



(どうしよう、どうしよう・・・・・!!)


顔に手を当てていると、やはりそこは紅くほてってしまっていて。


とりあえず混乱した頭を落ち着かせると、事情を話さなくてはと思いカガリのいる部屋へと向かう。


(・・・・・・どうやって説明しよう・・・・・・・・)


部屋の前に到着すると、中から話し声が聞こえるのを聞いて立ち止まる。


(・・・お客さんかな?)


今自分が入っていったら、影武者がばれてしまうのだが。


そんなことに構っていられる状況じゃないのも確かだ。


とりあえず、お客が誰なのかと思い、ドアに耳をたてる。


聞き取りづらいが、何とかごしょごしょと話す程度には聞こえる。



『・・・だから、そうじゃないっていってるだろ!』


『だったら、どうしてあんなことをしたんだ?』


聞こえるソプラノボイスは、間違いなくカガリのだ。

しかしもう一方のアルトボイスは誰のだろう。


聞き覚えは確かにある。でも、思い出したくないような・・・・。




(・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?)





この声はひょっとすると、というかひょっとしなくても・・・・・。





『だから違うって言ってるだろ!アスラン!!』



(やっぱり・・・・・!!)



どうしようとあせっていると不意に体が倒れこんだ。


体を傾けていたドアがひられたのだ。


室内を見てみると、そこにはカガリとやはり自分の思ったとおりアスランがいた。



「・・・・・キラ?」



何をしてるんだという瞳でカガリが見てくる。



いたたまれない気持ちになって、立ち上がり廊下を走り出す。



「キラっ!?」


カガリとアスランの驚愕した声が後ろから聞こえてきたが、それでも走り続ける。



(どうしようーーー!!!)



一回落ち着きを取り戻した頭はまたすぐに混乱してしまった。



カガリにも、アスランにも迷惑をかけてしまった。


いや、かなり彼らにも責任があると思うのだが。


如何せん、自分が一番罪が重いのは確かだろう。


(もう、顔見せらんないよ・・・・!)


もうわけがわからなくなって、走り続ける。


そうやって走っていると不意に後ろから強く引っ張られた。


「うわあっ!!」


まさか引っ張られるとは思っていなかったので、体制を大きく崩してしまう。


(ぶつかるっーーー!!)


そう思って、目をつぶっていると予想していた衝撃は襲ってこなかった。


「・・・・?」


恐る恐る目を開けてみると、そこには見慣れた翡翠の瞳があった。



「ッアスラン!?」



何で追ってきたのだと非難がましい目を向けると、彼は目を細めて笑った。


・・・・・なんか、むかつく。


「何で、追ってきたのさ!」

そう怒りながらいうと、彼は笑ったまま言う。


「逃げるから。」



その返事はどうみても、ふざけてるようにしか聞こえなくて。

さらに怒りは募っていく。


「放せよっ!!」


そういって、腕の中で暴れるがなかなか腕から逃れられない。


・・・・・明らかに、体格の違いを裏付けている。



「落ち着けって。」

そう優しい声音で悟られてもそれが聞けるような状況ではなく。


「これが落ち着ける状況かー!!って君なんでそんなに落ち着いてんのさ!!」


おかしい、彼はなぜカガリが二人いることを不思議に思わないのだろうか。

      
カガリから事情を聞いたにしても、自分の事を怒るとかあきれるとかしてるはずだ。


・・・・っていうか、普通避けるだろう。


彼だってあの行為は相手がカガリだからしたものなのだし。


(明らかにおかしいだろ!!こんなのっ!!)


「って、お前気付いてないのか?」


相手はやっと驚いた顔をして、そういった。


何に気付いていないというのだろうか、というか気付いていないのはそっちじゃないのか。


そう思って、疑問のまなざしを向けると相手は大きく嘆息する。


・・・・・・やっぱり、むかつく。


「何に気付いていないって言うんだよ。」

すねた声でそういうと、相手はあきれたような声で言う。


「お前俺が、キラがカガリの代わりになっていたのを知らなかったと思うのか?」


「えっ!?」


驚いた顔をすると、相手は少し怒ったように目を眇める。


「・・・何年、幼馴染をやってきたと思ってるんだ。」


―――それくらい、雰囲気でわかる。


そういった後、また目を細めて笑う。


「だって、だったら、君なんであんなことしたんだよっ!!」


「・・・・え?あ、あれか。」



「あれか、じゃないーーー!!」


まるで今の今まで忘れていましたとでも言うような相手の口調にまたも怒りを覚える。


おかげで、また頬が赤くほてってしまった。


そう呼吸を荒げながら叫ぶと、相手はこともなげに返事を返してくる。

「だって、キラが積極的だったから。」


「・・・・・・・・は?」


聞き間違えたのだろうか、それとも自分の耳がおかしくなったのだろうか。



いま、彼はなんと言った。



「・・・・君、カガリと付き合ってるんじゃないの?」


「まさか!カガリとは“戦友”だな。」


「・・・・・・僕だとわかってあんなことしたの?」


「うん。」



「・・・・・・・僕、男なんだけど。」



「ずっと前から知ってるよ。」



・・・・・・・・・気が抜ける。



何だろう、この疲労感は。


特に何かをしたわけではないのだが。



「とりあえず放してくれない・・・・?」


「俺としては、この方が気持ちがいいんだけど。」

      
誰だ、この飄々とした顔でこんなこと言うやつは。



「頭、痛くなってきた・・・・・。」


「大丈夫か?」


「誰のせいだと思ってるんだよ・・・・。」



ため息をついて、彼の腕からどうにか逃げ出し歩き始める。

これ以上顔をあわせていられるものか。


しかし、そんなキラの願いなどむなしく彼もついてくる。



「・・・・・なんで、ついてくるの。」



「それにしても、本当に似てたな。」


キラの質問など聞きもしないという風に彼は話を続ける。

       
  
「・・・で、どうしてキラはこんな格好をしていたわけ?」



「どうしてって・・・。カガリに言われたから。」



『じゃあさ、私の影武者になってみないか!?』


『・・・・へ?』 


『大丈夫!お前ならきっとできるさ。』


『・・・その変な根拠は何処から出てくるの。』


『成せば成る!』


『いい加減なことを言うなぁああああ』


『つべこべいわずにやれっ!!』



『うわあああああ!!』



そうして、今に至るわけなのだが。


こうして考えてみても、特に理由なんてないのだが。


「・・・それだけ?」


「・・・・は?」


「本当に、それだけなのか?」

      
それだけも何も、本当にそれくらいしか心当たりがないのだが。




・・・・・・・・・そりゃあ、別の理由もあったかもしれないけど。




(・・・アスランにわかるわけないよ。)



彼の顔を見たくなくなって、目をそむけると、彼のほうからこっちによってきた。


「何か用?」

そうすねた声で言うとアスランは苦笑しながら、キラを抱き寄せる。


      
「・・・・・いい加減お前も意固地になるのをやめたらどうだ?」


        
「五月蝿いな・・・・!!」


      
「・・・・大丈夫だからな。」


そう優しく声をかけられ後、キラは俯く。



本当に、まいった。


(全部、お見通しですか・・・。)

       
自分がこんなことをした理由も。

最近の変な行動も。


彼の前では、全て解き明かされてしまうのだ。



そうやってしばらく俯いていると、不意に相手から声をかけられる。


「本当は、知ってたんじゃないのか?」 


そうやって微笑するその姿は余裕とも思える姿で、少しに気に障った。


「・・・・さあね。」


最後まで、お見通しなんてのも面白くないから。

最後くらいは、抵抗してみる。



でも、相手はそんなのお見通しだとでも言うように軽く笑った後、恐いな、などとうそぶく。



「・・・・本当、お前も俺も馬鹿だな。」

 
アスランは瞳を宙にさまよわせながら言う。



「でも、馬鹿でも何もせずにいられなかったんだ。」

       

そうだろ?といって相手に微笑を返す。
      
             
そうすると、相手も微笑を返してくる。


「・・・そういえば、カガリと何をはなしてたの?」

       
「ああ、あれは・・・」



       




エターナルの一室。

       

ここはラクスに与えられた部屋なのだが、さっきカガリがたずねてきたのだが、
どうにもこうにもその話がとんでもないことになっていたので空気は少し重い。

「アスランにさ、聞かれたんだ“どうしてお前はそんなことをしたんだ”って。」

少し落ち込んだ表情でカガリは話す。 
       
「あいつがさ、“お前が無茶をいってやらせたのか?”っていうから。」

そこで少し憤慨したように声を荒げる。


「“そうじゃないっ!”って言ってやったんだ。・・・・私がそんなことするわけないだろう。」

      
そりゃ多少は強引だったけどさ。

などといってまた、落ち込んだ表情になってしまう。
 

「それで、カガリさんはどうしてキラにそのようなことを?」


ラクスは不意に口に出た疑問を口にすると、カガリは切迫した顔で言い募る。


「だって、心配だったんだ!!」


「あいつ、終わったのに。戦争が終わったのに。全然、生きているような顔しないから・・・。」


最近、ボーっとすることが多くなっていた。
 
      
未来のことを問うと“考えていなかった”という。

 
まるで、これから先自分が生きていかないかのような口調だったから。

すぐにでも、消えてしまいそうだったから。


少しの間でもいい、存在意義を与えればいいと思った。
  
      
(結局、いらぬおせっかいだったのかな・・・・。)

      
そう落ち込んでいると、優しい声で喋りかけられる。
    
    
「カガリさんはお優しいのですね。」

そうやって微笑むピンクの天使に、少し苦笑する。


「それは、ラクスにいえることだろ。」 

    
本当に自分の周りには、優しい奴ばかりがいる。

そして、また強い。

     
 
強さと優しさは同意義。



優しさがあるからこそ、強くなれて。

強さがあるからこそ、やさしくなくなれて。
 


だから、自分も安心してここにいられる。

自分をさせてくれる存在だってわかっているから、ここにいる。


 
「あいつも、早く気付けばいいのにな・・・。」


多分、彼はわかってはいるのだろう。


ただ、目をそむけているだけで。


ボーっとして、頼りなくて、すぐなく。


どうしようもない奴だけれども。


すごく、優しい。・・・・だから、放っておくなどできない。
         

「今頃、二人はどうしてるのでしょうね・・・・。」


「さあな・・・。」


変な風になっていないといいのだが。
      
       
まあ、どうあっても、結果は同じだろう。

      
あの二人のことなのだから。




      










事の顛末をきいて、すこし驚く。

アスランがカガリにそのようなことを言うとは、思っていなかったからである。


無言で彼に非難がましい視線を送ると、彼はなんでもない風に

「俺だって確認のために聞いただけだ。」

というので、もう何も言わないことにした。
       


ひとしきり笑った後、目を宙にさまよわせながら呟く。



「僕はね、アスラン。」

それは、話すというより呟くといった表現のほうがあっている喋り方で。



「僕は、死ぬんだと思ってた。・・・・でも、こうして今生きている。」

アスランはその突拍子もない話をただ黙って聞いているだけで。


「何のために?どうして?」


ずっと、最近考えていたこと


ずっと、心の中に引っかかってたこと。


「そう、ずっと思ってた。・・・・でもね、最近考えるたびに彼女のことを思い出すんだ。」


泣かないで、と彼女は言った。


守ると、拙い口付けで約束をした。

    
自分は、約束を破ってしまったというのに。



―――彼女は、自分が笑っていることを望んでくれた。 
   
   
   
    
こんなにも醜い僕が、生きることを許してくれた。



それだけで、とても嬉しいことなのに。


・・・・ぼくは、恐いから目をそむけていた。


また何もできずに終わるのではないのか、と。


そうして生きていて後悔するのはもうたくさんだ、と。


そう、思ったこともあった。


でもそのたびに、彼女が笑うから。


だから、そのうち思うようになった。


「僕らはね、何かをするために今を生きてるんだ。」


「だから、僕はここにいるんだと思う。」

      
二度と、後悔しないように。

ここなら、きっと自分も何かできるはずだから。



だから、ここにいることを望んだ。





そういうと、相手もまっすぐにこっちを見てきて優しい瞳で言う。




「お前が望むのなら、ここにいたいと思うのなら。俺はいつだって、迎えるさ。」



あの真空の大地に君が横たわっていたときのように。

そして、儚げな姿が消えてしまう前に。






―――君を、迎えに行くよ。









生きることに不器用で、鈍い君だから。

ここにいて、いいのだと。


そう願いを込めて。


あの時と同じように、手を伸ばす。



       
いつか、君がまた傷ついたときは、迎えに行く。


         
そう、人知れず己に誓いを立てる。



多分、まだ終わりなど来ないから。

果て無き連鎖はまだ続くだろうから。

        

だから、そのときに、彼がもう一度立ち向かう勇気を出せるように。

後ろで支えることができる場所を作っておく。



(・・・・だけど、とりあえずは。)












「「・・・・・お疲れ様。」」




そうお互い言い合って、笑う。


こういう穏やかな雰囲気がずっと続けばいいのに。






そう、思いながら、笑いあう。





まだまだ道は果てしく続けれど。





それでも、今を生きているのだから。




“何か”は、きっとできる。





そのために、とりあえずは、今を生きよう。




       
・・・・きみと、一緒に。








――end?――





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